カウアイ島の観光スポット

ロシアン・フォート・エリザベス
Russian Fort Elisabeth

ハワイ州歴史的建造物指定の幻の要塞

Russian Fort Elisabeth

カウアイ島の西海岸、ワイメア川の河口にハワイ州歴史的建造物に指定されているロシアン・フォート・エリザベスがある。Fort(フォート)とは砦、いわゆる外敵の攻撃から守る要塞だ。カウアイ島内には、19世紀前半に建築された3つのフォートが存在していたが、その中で唯一、ロシアン・フォート・エリザベスは現代まで残っている希少な史跡と言われている。一般的なロシア建築様式のフォートの景観は四角形であるのに対し、ロシアン・フォート・エリザベスは不定型の八角形が特徴。直径約91メートルから140メートル、壁の高さは約6メートル。木工などによる基礎工事は施されておらず、盛った土を石で覆ったような構造のようだ。フォート内には、砲台跡や武器庫跡があり、要塞の横にはカウムアリイ王の住居跡やカウアイ島最初のキリスト教宣教師であったウィットニーの住居跡も残っている。かつてフォートに備え付けられていた銃や大砲などの武器類は、1864年に全て撤去されたが、現在でも石積みされた砦の一部を見ることができる。

カウアイ島 ロシアン・フォート・エリザベス
ロシアン・フォート・エリザベスの跡地。
カウアイ島 ロシアン・フォート・エリザベス
資料にはロシアン・フォート・エリザベスに関する詳細が記されている。

ロシアン・フォート・エリザベスの歴史

ロシアン・フォート・エリザベスは、野心家であったひとりのドイツ人医師ゲオルク・アントン・シェーファーの野望から生まれた、幻の要塞と言われている。そのストーリーは、1815年1月、ロシアン・アメリカン・カンパニー所有のロシアの貿易船ベーリング号が嵐によって西海岸ワイメア沖で座礁し、カウアイ最後の王カウムアリイがそれらの難破船と積荷を手中に収めたことから始まる。

積荷の毛皮に関してカンパニーが被った損害を補うために、カウムアリイ王との外交交渉を目的としてロシアン・アメリカン・カンパニーから派遣されたのがシェイファー医師だった。1815年10月、シェイファーはオアフ島に上陸する。偶然にも病に伏していたカメハメハ大王とカピオラニ女王の治療に尽力したことから大王の信頼を獲得した。シェイファーは、いずれカメハメハ大王を通じてカウムアリイ王とのコネクションを得ようと計画していたようだ。しかし、カメハメハ大王の協力が得られないことが判明すると、自らカウムアリイ王との直接交渉を試みてカウアイ島へ乗り込んだ。そして、シェイファーはカンパニーの任務である交渉にとどまらず、陰謀とも言える自らのアイデアをカウムアリイ王に持ちかけた。

そのアイデアとは、ロシアが後ろ盾となってカメハメハ大王と戦い、カウアイ島を取り戻し、他の島をも手中に収める手助けをするというものだった。同時に、ロシアがハワイ全島を植民地にするもくろみもあったようだ。シェイファーは、この計画に気を良くしたカウムアリイ王から西のワイメア川河口と北のハナレイ川河口の土地を与えられ、ワイメア河口に要塞を建設しロシアの旗を掲げた。要塞は、ロシア皇帝アレキサンダーの王妃の名前からフォート・エリザベスと名付けられた。

ところが、シェイファーの独走的な計画と実行の知らせを聞いたロシアン・アメリカン・カンパニーとロシアの皇帝アレキサンダーは、カメハメハ大王との交易関係を崩したくないなどの理由でシェイファーの策略を却下した。この時すでに要塞は完成しており、武器と共に戦いの準備も整っていたという。シェイファーは、カンパニーへの損害賠償責任とカウムアリイ王への約束不履行を理由に、1817年の秋、カウアイ島から強制退去となった。その後、要塞に掲げられていたロシア国旗は、速やかにハワイ王国国旗に変えられ、ロシアン・フォート・エリザベスはカメハメハ大王の傘下に置かれた。後に、シェイファーが画策したこれらの出来事は大きな外交問題へと発展したと言われている。この激動のストーリーは、たった2年の間に起こった出来事である。

カウアイ島 ロシアン・フォート・エリザベス
カウアイ島 ロシアン・フォート・エリザベス

要塞で起きた唯一の戦い

シェイファーの強制退去まもなく、幼くしてカウアイ島を離れていたカウムアリイ王の息子であるプリンス・フメフメ(ジョージ・カウムアリイ)が、カウアイ島に入港した。当時、要塞からは歓迎の銃声が鳴り響いたそうだ。しかし、カウアイ島に戻りカウムアリイ王の息子である自覚が芽生えはじめたプリンス・フメフメは、カウアイ王国の復帰を企て、カメハメハ派に守られていた要塞に攻め込んだのだ。このプリンス・フメフメの反乱がロシアン・フォート・エリザベスにおける唯一の戦いだったようだ。

カウアイ島 ロシアン・フォート・エリザベス
カウアイ島 ロシアン・フォート・エリザベス

Column旅のワンポイントガイド

ロシアン・フォート・エリザベスは、リフエ方面から50号線カウムアリイ・ハイウェイ(Kaumualii Hwy.)を西海岸へ向かうとワイメア川手前の海側に位置している。現在はハワイ州立公園に属しており広い駐車場とトイレを完備している。駐車場からは短いトレイルが整備されており砦を一周できるようになっているので、掲示板のマップを参考に散策してみよう。ワイメア川河口のこの辺りは、キャプテン・クック上陸の歴史に関わる重要な場所だ。ハワイに西洋文化が入ってきた港である。

Information

地図 MAP
住所 Kaumualii Hwy. Waimea HI 96796